カンマンボロンを探し廃道をゆく。
精神ゲージをすり減らしながらの山旅でした。
【今回のルート】
みずがき山自然公園→登山口→カンマンボロン→瑞牆山山頂→不動滝コース→みずがき山自然公園
合計距離 7.13km
累積標高差 824m
合計時間 5時間3分(行動時間4時間32分+休憩31分)
【いきさつ】
10年前にも一度登っているのですが、山を含めその周りの雰囲気がとても好きでこの辺りには何度か訪れている私たち。その中で、観光マップなどを見ると瑞牆山の山域に「カンマンボロン」という不思議な言葉が書かれているのに気付きました。当時は変わった名前だね~くらいにしか思っておらず(他にも魔子の山だのタコ岩だの気になるものが多すぎた)、カンマンボロンが何なのか、一体どういう場所なのか、深く調べることもなく数年が過ぎていきました。
そして昨年か一昨年だったか、「カンマンボロンに行ってきました」という人の話を偶然web上で読んで…
カンマンボロンってこんな場所だったのか&実際に行けるんだ!
と衝撃を受けた私。
いつか絶対に行こう、と心に決めたのでした。
▲カンマンボロンとは
瑞牆山の山中の岩壁にカンマンボロン(大日如来・不動明王の意)という梵字が刻まれていて、これはその昔弘法大師が刻んだものだという伝説が残っているそうです。
弘法大師はこの山の姿を愛し、ここを霊場にするため梵字を刻んだそうなのですが、霊場にするためには八百八谷が必要らしく、ここでは谷数が不足するため去っていったとのこと。今でも山中に大日岩があってその背後に不動明王を祀っているそうです。
(増富小学校HPを参考にさせていただきました)
そして2020年。
年始から「今年はカンマンボロンに行くぞ~」と決意する中、冬にたまたま歩いた里山の戸倉山(日本一高所にあるとされる不動明王碑)、吉田山(磨崖仏の不動明王)…おや?もしかして今年って不動明王に縁があるのか??
それならば今年のうちに探しに行こうじゃないか…カンマンボロンを!
という話になったのですm(._.)m
ただ心配なのは、登山口からカンマンボロンまでのルートは廃道のため非常にわかりにくいということ。ネットであれこれ調べてみると、迷って30分~1時間程度時間をロスする人もいるらしい。ビビリの私は実際に行った人のレポを必死こいて読み漁り、最終的にはYouTubeまで見て予習する始末。
※山登りの経験がない方や初心者の方だけで行くのは危険ですのでご注意ください。
そして情報を頭に入れすぎて少々ワケがわからなくなりかけた頃、当日がやってきました。
【本編】
いつも以上に長い前置きで失礼しました。
無事に辿り着けるだろうかという不安と、いよいよだ!という興奮。
なんにしてもドキドキで現地を目指します。
道中、正面に山が見える場所があったのですが左のが瑞牆かな?そして右は金峰?
8時半頃、みずがき自然公園に到着。
ここからの周回ルートのコースタイムは、順調に行ったとしてざっと5時間+αといったところなので今回はややゆっくりめな出発です。
まわりには登山者の姿はなく準備中のクライマーさんたちがたくさん。
8:52 準備を整え私たちも出発です。
公園を出て林道をほんの数分歩いて登山口へ向かいます。
ポイント① 倒れた案内板
林道から伸びている登山道はいくつかあるのですが、カンマンボロンに行くためにはここから入ります。この倒れた案内板が目印。
実は今年の冬、この登山口の前を歩いて通過してるんですよねぇ。その時「案内板が倒れてる…使う人少ない場所なのかな」と気にはなったのです。まさかここが異界への入り口だったとは。
マップをのぞきこんでカラマツの葉を少し払うと、カンマンボロンの文字と不思議なマークが。無事辿り着けますように。
ポイント② はじめのY字路は「右」へ
皆さんが書かれているのを見ると、ここが一番大きなポイントのようです。ここさえ間違えなければほぼ大丈夫、とのこと。
朝の柔らかな光がとてもきれいです。
このかわいいまん丸は何かの花後?アザミとかかなぁ…ちょっと違うか。
ポイント③ 五差路は直進!
Y字路の先に五差路がありますがここは真っ直ぐです。
私の記憶では五差路は二回出てきたような気がしたけどどちらも直進。
このあとはただひたすらに目印を探しながらカンマンボロンを目指します。
コースタイムでは1時間ほど。多少迷ったとしても1時間半以内には辿り着かないとな。
登り始めてしばらくは踏み跡もわかりやすくのんびり歩けたのですが…
少し進むと、「次はどっちだ…?」と立ち止まることが多くなってきました。落ち葉で踏み跡が少々分かりにくかったせいもあるかも。
でも、探せば必ず目印があります。
白いテープ、ピンク色のテープ、木や岩のペンキマーク、低い位置、高い位置、見た目は様々ですが必ず見つかりますから慌てないで探すことが大事。
マークを探しながら歩いていると、オットが突然こんなことを言い始めました。
「ちからみず、だって~」
は・・・?あの炭酸飲料・・・?
いや、これカ↑だわ!(;´Д`)
「カンマンボロンのカと矢印だよ!」とオットに言うと「ああっ、そうか~」と納得していました。はあ、力が抜けた。
その後、マークを探しながらしばらく順調に進んでいたのですが、ある時登山道のすぐ脇に生えていた木にかなり新しい熊の爪痕を発見・・・そりゃあいるよ、とは思ったもののいっぺんに背筋が凍った私たち。そこからは、熊がいないか周囲を警戒&マークを探すことでなんだか精神的な疲れが・・・
いやいや、まだ序盤!気合入れ直して行こう!
正面に大きな岩壁が見えてきました。
カンマンボロンを探すためにはまず岩壁に辿り着かねばなりません。あそこがそうなのかなぁ。
はじめは緩やかな登りですが、だんだんと急登になってきました。
踏み跡がかなりわかりにくくなってきたので、とにかくマークを見失わないように。
はっきりしたものがあると心強い。
→こっちこっち。
あ、きれいな金属製のプレート。
皆さんのレポで何度も見たやつだ(^^)
岩壁にだんだんと近づいてきましたよ。
途中で分岐があって、左上に上がっていくとカンマンボロン、そのまま真っ直ぐ行くと瑞牆山頂方面(一般登山道と合流)になるのですが、この写真がその分岐だったかな…?確かそうだったような気がするけどもし違ってたらゴメンナサイ(;´Д`)
とにかく岩壁目指して登っていきます。カンマンボロンはもう近いはず。
ずんずん登って岩壁に辿り着き、行き止まりになりました。
事前にした予習によると、ここは
左、ではなくて
ポイント④ 岩壁の行き止まりは右へ!
ここは右へ行くのが正解です。
狭い岩場を少し下っていきます。
下りきったら、目印のテープがあるところで左上を見上げてみます。
なんとなくそれっぽい…ような気がする。
左上に向かって登っていきます。
登りきると、左手になにやら岩の隙間が…
見上げると、ネットで見た天井岩が。ここだ!
そうそう、この隙間を通って向こう側に行くんだ。
ヨイショっと・・・
・・・・・・・・・・ザック下ろさんとだめか。
空身になって再チャレンジ。
女性ならザック背負ったままでも行けるかもしれないけど、私もなんとなく身軽になってからヨイショっと。
すると、
9:44 カンマンボロン、ドドン!!
わー、これだ・・・とうとう見れた~~~~~\(^^)/
駐車場からのコースタイムは1時間となっていましたが、順調に進み45分で来られました。良かった!!
なんて不思議な風景なんだろう。
弘法大師が刻んだという伝説、もしくは「いやいやただの雨風の侵食でしょ」という話もありますが… 自然にできたものだとしてもなかなか見られない造形ですよね。
上を見ると天井の岩がちょっとこわい…あれ落ちてこないのかな。
カンマンボロンの反対側も絶景なんですよ。
この日はちょっと雲が多かったけれども。
木々の紅葉は終わっているけど陰影がきれい。
もう一度岩壁に向き直る。うーむ、素晴らしいなぁ。
ところでこのカンマンボロンがある岩壁は十一面岩(といちめんいわ)というそうです。この隣にはワイルドアットホームと言う有名なクライミングの課題があるそうですよ。瑞牆周辺でクライミングというと大ヤスリ岩くらいしか知らなかったのですが、他にもたくさんのスポットがあるんですね。
さて!秘境をしっかり堪能させていただきました。お邪魔しましたm(._.)m
そろそろ瑞牆山頂に向けて出発しましょうか。
ここからは2時間弱のはずだからお昼前に山頂に着けばいいくらいかな。
また狭い岩の隙間を通り、ザックを背負い、来た道を戻っていきます。少し下ったところから振り返ると、
あ、カンマンボロンがちょっとだけ見えた!
なんだか感慨深いですね…また必ず再訪しよう。
岩壁の周りをぐるりと戻り、
元のコースに合流し、山頂への道を進んでいきます。
カンマンボロンに無事辿り着けてものすごくほっとしたのですが、まだまだ気を抜くわけにはいきません。ここから一般登山道と合流するまで廃道が続くのですから。
【余談ですが】
ネットを見ていると私たちが通ったのと若干違うルートでカンマンボロンに辿り着いている方もいるようです。なんにしても辿り着ければOK!ですが道迷いには十分お気をつけくださいm(._.)m
引き続き、マークを探しながら慎重に進んでいきます。
途中、シャクナゲの群生地が何箇所かありました。
そういえば10年前に別ルートで登った時は6月だったからシャクナゲが咲いていたんだっけ。ここもお花が咲く頃になるとにぎやかなんだろうなぁ。
だんだん傾斜がきつくなってきました。
ロープがかけられた岩場も数か所出現。
こういうところでは基本的にロープや鎖は使わない派なのですが、2か所ほどロープを使わないとどうしても登れないところもありました。慎重に進みさえすれば決して難しい岩場ではないのですが十分お気を付けください。
この日もおそらくたくさんの人が登っていたであろう瑞牆山。
でもこのルートでは誰とも会いません。静かすぎる…。
少し心細くなった頃、ケルンを見つけて少し励まされます。
決して多くはないけれどこの道を歩く登山者やクライマーはちゃんといるんだわ。
遠くからは富士山も見守ってくれています。よし、頑張ろう!
またもや金属製のプレート発見。よし、ルートミスってないな。
前方に巨岩が見えてきたんだけどあれって大ヤスリ岩かな。
見る角度が変わると全然わからん…。
他にも不思議な形の巨岩が続々。さすが瑞牆。
おっ、また富士山が見えた!嬉しいな~。
あともう少しで合流かな~と思いながら登っていくと、
前方が真っ白に… あ、あれ岩か!
ドーン!!
ものすごい大きさ。これが大ヤスリ岩の基部なのかな。
クライマーさんがいるかなと思ったんだけど一人も会わず…。
でもうっすら声が聞こえたような気がしたのでどこかにはいたのかなぁ。
岩のテラスの先からの眺めもすごいですよ~。
絶景。向こうに見えているのは八ヶ岳かね。
雲がダイナミック!!
麓の紅葉もきれいだな~。あ、小さな集落発見。
絶景をしばし楽しんだものの、この辺りまで登ってくるとかなり気温が下がってきました。足元には霜柱もちらほら…。立ち止まると鼻水が出てくるのでわしわし登っていきましょう。
↑上の写真、どこをどう登ったんだか覚えてないんだけどテープがついてるからここを歩いたんだよなぁ確か。
合流はまだかな~と思いながら数分登っていくと、突然前方から鈴の音が。
おーこんなところ誰か下ってくるよ!すれ違うのに道あけなきゃ…
と思ったら、
あっ、ロープが。…おお、合流じゃん!!!
11:15 わーいわーい無事に一般登山道に合流しました\(^^)/
ちなみにカンマンボロンに通じる廃道を一般登山道から見ると↑こんな感じです。
聞こえてきた鈴の音は山頂から下ってきていた男性のもので、私たちが変なところから現れたので「えっそっちも行けるの?」と驚かれました。
(カンマンボロン経由で登ってきたんだけど下りで使うにはあまりおすすめではないルートです、と伝えておきました。地元の方みたいだから私たちよりよっぽど詳しそうだったけど、念のため。)
ここまで来れば山頂まではあと20分くらいかな。
ずっと廃道を歩いてきて道迷いの心配ももちろんあったけど、それよりも人がいない&熊の気配に怯えてなんだか心細くなっていたので合流した途端に元気モリモリ。岩場もよっこらしょ。
人の多い山は苦手だけど、この時は「人とすれ違うっていいなぁ…」と心底思った私なのでした。(自分勝手だなー)
そして、
11:37 瑞牆山山頂に無事到着いたしました\(^^)/
10年ぶりの山頂。なんだか感慨深いなぁ。
まだまだ話は続くのですが、すっかり長くなってしまったので続きは【後編】で!
ここまで読んでくださってありがとうございました(^^)
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