ひねもすのたり。

日々と山と猫と蕎麦屋のこと。

▲空木岳(2,864m)池山尾根 2021年8月2日≪前編≫

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念願のロングコースに初挑戦の巻。

 

 

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【今回のルート】

駒ケ根高原スキー場駐車場→池山尾根で空木岳山頂のピストン

▲合計距離 19.61km

▲累積標高差 2202m

▲コースタイム 12時間20分(休憩含む)

 

【いきさつ】

飯島へ引っ越してすぐの頃、地元のお客様から「このあいだ池山尾根で空木岳日帰りしたのよ~」というお話を聞いたことがありました。

えっ、空木って日帰りできるんですか?と尋ねると「意外と行けちゃうから挑戦してみたら?」と言われ。確かに林道終点まで車で入っちゃえば行けないこともないかも…とは思いつつ、それでも結構なロングコースなのでなかなか挑戦できずにいた私たち。

そうこうしているうちに、終点の登山口へ続く林道が土砂崩れなどの事情で止まってしまうことが多くなり、更に2020年からのコロナ禍…林道は完全に閉鎖されてしまいました。

そうなると麓のスキー場から歩かねばなりません。ヤマレコによるコースタイムは往復13時間30分+休憩。更に日帰りで標高差2000mを超えるとは…私たちにとって未知の世界。

でも…大丈夫、行って行けないことはない(?)と自分に言い聞かせ、挑戦してみることにしました\(^^)/

 

【本編】

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3:48 駒ヶ根高原スキー場から出発。

ヤマレコなどを見るとこのコースを日帰り往復しているのはトレランの方がほとんど(一般登山者でも超健脚さんばかり)。私たちはへっぽこハイカーなのでかなり早めのスタートです。

それでも一応目標はコースタイムの0.8倍。

今回長丁場なのでいくつかのポイントを通過する際の目標タイムを紙にメモしてポケットに入れておきました。なんだかアナログだな…現代人ならスマホにメモするのが普通なのかもしれませんが(;'∀')

スキー場から、まずは林道終点を目指して暗い中を登っていきます。

 

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途中、林道や遊歩道らしき道を何本か横切りつつ。

真っ暗だと周りの様子がわからない分、余計に長く感じるなぁ。

 

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林道終点手前でようやく明るくなってきた!

ここまでの道のりが意外と急ですでに疲れが(;'∀')

 

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4:52 林道終点から。

 

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ぼんやりとした雲海だ… このあと雲が取れるといいな。

 

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そして早く林道が開通しますように…(へっぽこハイカーの願い)。

さて!元気出して先へ進みます。

ここから水場辺りまでは、以前池山に登った時に歩いているはず。

 

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…でもあまり記憶がない(;'∀')

↑ショートカットコース、こんなに藪だったっけ。

 

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タカウチ場まで来ると木々の間から朝陽が。まぶしい~。

 

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スキー場から林道終点までの道と比べると、傾斜が緩くてとても歩きやすい登山道。

周りもどんどん明るくなってきてウキウキです。

 

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華奢な茎と白いお花。これはセンジュガンピかなぁ…と思いつつしっかり写真を撮らなかったことを後悔。

 

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白い装飾花のこういう木は全部ノリウツギに見えてしまうけど…オオカメノキ?あるいは全然違う名前かも(;'∀')

 

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とても気持ちの良い早朝の山歩き。

 

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そうそう、この辺りは「サルオガセの森」だったっけ。

以前池山に登ったときにやたらとあちこちにサルオガセがぶら下がっていて、とても印象的でした。今回もたくさん見られましたよ。

更に登っていくと、前方からなにやら不思議な音が。ゴオォーというかドオォーというか…風?いや、水の音?

オット「水場が近いんじゃない?」

 

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あ、ほんとだ!

以前にも立ち寄ったことのあるこの水場。豊富にじゃんじゃんと流れている様子を見るのはなんだかとても嬉しい。

それにしてもまるで沢のように水の音が辺りに響き渡っていました。

 

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美味しいお水を一杯だけいただいて、先へ。

下る頃には空になったボトルがあるだろうから汲んで帰ろうかな。

 

このあと、写真を撮りながらトコトコ歩いていると後ろから単独の若い男性が。

間違いなく私たちより速いだろうから(若い男性への偏見^^;)途中で追い抜いてもらいました。でも…

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この先のマセナギで小休止しよう!と思っていたらお兄さんも休憩されていて「あっ…ドウモ…お邪魔します」。

こんなご時世ということもあって色々話しかけるのも悪いかなと思い、少し離れたところで休憩させてもらうことに。

ここまで楽々だったけどもう1000mくらいは登ってきているんだなぁ。最初の林道終点までがちょっと急だったけどそれ以降がずっとゆるゆるなので意外と疲れは無し。でもまだまだ先が長いからな…

 

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ロングコースを歩くときの鉄板、『おにぎり大作戦』。

100gくらいのミニおにぎりをたくさん持っていって1時間にひとつくらいのペースで食べていきます。(合間に飴や行動食も少しつまみつつ)

今回のおにぎりがとても美味しかったので改めてメモしておかねばな。

むしゃむしゃと食べ、先にお兄さんが出発されたのを確認してから私たちも出発。

 

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登山道の様子が少しずつ変わってきました。

このつやつやした葉っぱたちはイワカガミ…ではなくイワウチワじゃないかなぁ?なんだか越百山への道みたい。

 

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歩きやすい尾根道がずっと続いています。なんて快適なんだ。

 

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この辺りはカニコウモリの大群生。

とても気持ちの良い小道\(^^)/

 

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カニコウモリって決して派手な花ではないけど、ここまでたくさんあると見事だなぁ。大きな葉っぱも涼し気だし。

 

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朝陽を浴びるカニコウモリたち。

ついつい何枚もカシャッとな。

 

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その先でギンリョウソウも見られました。今年初めてお目にかかるなぁ。

 

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まだまだ続くカニコウモリロード。

 

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歩いていて楽しすぎる登山道。池山尾根、天国だな…!

 

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…と思っていたら道がだんだんと険しくなってきました。

連続する階段状のハシゴ。この辺りから小地獄なのかしら?

※池山尾根には大地獄・小地獄という難所が存在します。案内板などはないのですがハシゴが連続する辺りが小地獄、クサリ場があるところが大地獄だそうです。

 

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樹林帯の中だから怖くはないのだけど、痩せ尾根なのでうっかり足でも引っかけたら谷底まで転げ落ちるんだろうなぁ…という場所はいくつかありました。慎重に行けば大丈夫。

 

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ちょっと長めのクサリ場。ここが大地獄かな。

難しい場所なのかなという印象を持っていたのだけど、実際は左側の木を伝っていけばクサリを使わなくても登れるくらいでほっと一安心。でも雨の時は滑って怖そう…。

 

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なぜか光を放ちながら登るオット(;'∀')ガンバレガンバレ。

 

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無事に地獄を通過しましたー\(^^)/

でも痩せ尾根はまだまだ続きます。あ、奥にはまたハシゴが見える。

 

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岩場を過ぎるとまたお花との出会いが。

おお、クルマユリだ!!…む、もしかしたらコオニユリか?

クルマユリは葉が放射状に輪生し、コオニユリは葉は交互につく。おしべの色がクルマユリはオレンジに対し、コオニユリは茶色に近い色をしている。…とのことです。

↑上の写真は多分クルマユリで合ってると思うけど、もっと葉の写真をしっかり撮っておけばよかったなぁ。

 

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そして再びカニコウモリの大群生に遭遇♪天国だ~。

 

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ふと、東側が開けたので目をやると…

わわわっ南アルプスが見えた!!!

 

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雲海の向こうにぽっかり浮かぶ姿がまるで島のようです。

真ん中の▲が甲斐駒、左に鋸、右に仙丈。

 

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山々が見えたことで元気百倍\(^^)/

更に、この辺りからまた違う種類のお花たちも現れはじめました。

この白いお花を山で見かけるたびに「なんとかショウマ」と呼んでいますが、本当はなんていう名前なんだろうなぁ…(;'∀')サラシナショウマは形が違うし。強いて言えばトリアシショウマ??

 

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ふと斜面を見上げると、なんとかショウマやカニコウモリたちが大群生を作っていました。またしても天国…ここに住みたい。

 

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あ、ホタルブクロだ!

その下には(ボケちゃっててしっかり写ってないけど)トラノオのようなひょろんとしたお花も。

 

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8:04 そうこうしているうちに迷い尾根に到着。

左下の看板を見て「えっまだこの先も痩せ尾根が続くの!?」と口走った私に、オットから「いやこれは上から来た人に向けてでしょ」と冷静なツッコミ。おお、そういうことか…よく見たら矢印もちゃんと書いてありました。

立ち止まったついでに、目標コースタイムをメモした紙を取り出して確認してみます。実は小地獄に差し掛かる辺りまではどのポイントも目標より早く通過できていて「よし、1時間近く貯金ができた!」と思っていたのですが…

痩せ尾根やクサリ場を通るときにかなり慎重に歩いたことでちょっとずつ貯金を切り崩し、気付いたら本来の目標ペースにだいぶ近づいてきていました(;'∀')

ちょっと残念…… いやいや!競争じゃないんだし目標通りに歩ければそれでOK!とにかく安全第一で!

 

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脳内でそんなやり取りをしつつ(なにやってんだか)、次はヨナ沢の頭を目指して歩いていきます。またしてもなんとかショウマたちがお出迎え。緑に吸い込まれそう。

 

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そして到着♪

大学生くらいの男の子が一人で休憩していて「上の稜線に出たらめっちゃ気持ちいいですよ~」と言い残して下っていかれました。楽しみだなぁ。

 

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この辺りではシャクナゲも見られましたよ。

 

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足元にはゴゼンタチバナも。マイヅルソウの葉っぱもあります。

 

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わっ、ハクサンフウロだ!とっても可愛いお花で大好きなんだけどあんまり綺麗に撮れなかったな(;'∀')

 

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この繊細なお花はカラマツソウだったっけ?日陰にひっそり咲いていて可愛い。

 

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ふと顔を上げると…右手(北側)の木々の向こうに山が見えてきました。

あれはどこになるんだ?オットが「伊那前岳かなぁ」と言っていたけど、こんなに近く見えるんだっけ?それとも檜尾のあたり?(山座同定がほんとに苦手でお恥ずかしい)

 

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9:33 空木平分岐にキターーーー!!長かった樹林帯が終わり、ここからいよいよ稜線に出ます。…とウキウキしていると後ろからトレラン風のご夫婦が。とても明るく楽しいお二人だったので、少しだけ立ち話(^^)

足の速そうなお二人に先行していただいて、私たちは後ろからトコトコと歩いていきます。

 

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おお… み、見えてきた……!!

 

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手前にぽこっと見えているのが駒石でその奥が山頂だな。

あともうちょっとだ~~~!!

 

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前方をよく見ると、マセナギ手前で道を譲ったお兄さんの姿が小さく見えました。ほんのひとこと挨拶を交わしただけなのに妙な連帯感が生まれて何だか嬉しくなってしまう。

 

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振り返れば南アルプス。仙丈、北岳間ノ岳

 

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そんな南アルプスの山々を背に登っていきます。オットからも思わず笑みが。

 

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ルンルン気分だったのですが、ふと頭上から異音が…

前方を見ると小屋より少し手前くらいのところでヘリがホバリングしていました。

どうしたのかな…。

 

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ヘリも気になるけど…それより駒石ドーーーーーン!!!

デカいデカいとは聞いていたけど本当にデカい!!\(^^)/

 

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私も一枚。

この駒石、みなさん登っている写真をよく載せているけど裏側から登れるのかな?先行していたトレランのご夫婦も登ろうとしたらしいのですが「よくわかんないから次はちゃんと調べてから来よう…」とおっしゃっていました(;'∀')

 

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ご夫婦と「どうやって登るんだろうね~」なんて話をしている間にも、先程のヘリがまたまたホバリング。ケガ人か急病人が出てしまったのかな…。数分後にヘリは飛び去っていったけど、結局何だったのかはわからずじまい。

私たちもお世話になることのないように気を付けよう。

 

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さて、気を取り直して山頂へ向けて登っていきます。

ふと駒石を振り返る…やはり巨大だな。

うちの裏庭から見えているのでここからも我が家が見えるはずなんだけど、この日のこの時間はまだ雲の下。

 

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山頂へ伸びる一本道。絶景!

 

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左手には、南駒とひょっこり田切岳。

 

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右手には木曽駒への縦走路。

 

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あ、檜尾の小屋が見えた!!

現在改装中なんですよね。これからテン場もできるそうなのでとても楽しみ。今年秋には完成予定とのことなので、来年か再来年には一度泊まれたらいいな~。

 

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振り返ると、雲に飲み込まれそうな南アルプスたち。

 

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塩見のとんがり頭のすぐ横に、富士山の頭がほんのちょっとだけ見えた\(^^)/

 

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あ!きのこの山みたいなこの石は見覚えがあります。

2年前に越百~空木を縦走したとき、駒峰ヒュッテからこの辺りまで散歩に来たのでした。この辺りで左側を見ると…

 

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稜線からぼこっと突き出た田切岳が異様な姿に見えるんですよね。

諸星大二郎作品的な異界感。

『武は五十六億七千万後の未来で弥勒になったのかもしれない・・・』をなぜか思い出してしまうわ(おそらく以前もまったく同じことを書いてると思う)。

 

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ザレザレの真っ白な道を歩いていくと、ぽつんと黄色いお花。

ミヤマダイコンソウかな?

 

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駒峰ヒュッテが見えてきた!あともううちょっと…

 

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11:07 空木岳山頂到着しました~~\(^^)/

出発からしっかり7時間かかってしまった…でも目標通り!自分としては上出来です。

 

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えっ、なぜカオナシ(;'∀')

 

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2年前に歩いた、南駒や越百へ続く稜線。

 

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御嶽山の姿もしっかりと。

 

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手前に檜尾尾根と、奥に木曽駒方面の山々。

あの三角形は宝剣が見えているのかな。

こうやって見ると意外と近そう…に見えるけど…アップダウンが大変とよく耳にします(私たちは木曽殿越~檜尾間は未踏なのです)。

 

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雲に飲み込まれた南アルプスと、眼下に駒峰ヒュッテ。

 

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あ、下界が少し見えてきた~~~。

 

絶景を眺めてしばしのんびりとした時間。

この日の山頂はとても空いていました。

2年前に訪れたときも平日だったけど(9月下旬)、縦走や日帰りの方で溢れかえってとてもにぎやかだったなぁ。今回は小屋も予約制だし、訪れる人自体が少ないのかな。

 

さてさて、このあと下山するわけですが長くなってしまったので後編へ続きます。

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