シュトルム『みずうみ』
美しく純粋な愛の物語、と評されるシュトルムの名作。
振り返ってみれば私はこれまでの人生でシュトルムの作品を読んだことがなかったなと思い、たまたまSNSで流れてきたのをきっかけに購入してみました。ここ数日、寝る前に数ページずつ読み進めています。
老紳士ラインハルトが、エリーザベトとの幼き日々を振り返る――― ある日学校が突然休みになったことを喜んだ二人の子供は、庭木戸をくぐって草原へと駆け出していく。草原には二人だけの秘密基地を建てていて、その中で夏の夕べを過ごすことを楽しみにしていた。
なんて眩しく穏やかな情景描写だろうと思って読んでいると、文中に突如現れたひとつの言葉が目に留まりました。
思いがけない休暇が、彼らにはもっけの幸いだったのである。
もっけの幸い……
あれ?切られ与三郎いる??
面へ受けたる看板の、疵がもっけのせいうぇい(幸い)にィ、切られ与三と異名を取り、押借り強請りも習おうより、慣れた時代の源氏店ァァ…
いかん、19世紀のドイツ文学が与話情浮名横櫛につながってしまった。いや厳密に言うと私の脳裏に居座っているのは歌舞伎などではなく『やっぱり猫が好き』で三姉妹が披露した寸劇の方なので余計にたちが悪いのですが。
『みずうみ』の表紙を見るたびにレイちゃん(与三郎)の「いやさお富ィ~、久しぶりだなァ~」がちらつき、きみちゃん(蝙蝠安)の「おしゃかさがでも、いやっ、お釈迦様でも気が付くめぇ~ハッハッハ…」が響く。
……まだ序盤だというのに、早速つまづいてしまった感が満載であります。
とはいえせっかく読み始めた作品ですもの、もちろん最後まで読みますよ。ラインハルトとエリーザベトの美しい愛の物語を。