一泊二日、南アルプスの山旅。水の山と、貴公子に会いに。
■日程■
9/2 北沢峠→仙水小屋→栗沢山→アサヨ峰→仙水小屋でテン泊
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元々は山の雑誌で読んだのか人から聞いたのか記憶が曖昧ですが
「アサヨ峰はどうやらいい山らしい」というのをなにかで知って
いつか行ってみたいなぁと思っていたのです。
展望がよくて人が少なく静かだと。
3年ほど前に一度「よし、今年はアサヨ峰に行こう!」と計画したことがあったのですが
その頃ちょうどアサヨ峰の手前の栗沢山がCMのロケ地になったとかで
例年よりも混雑しているというのを知って・・・
それなら今年はやめてほとぼりが冷めた頃に行こう、と延期したのでした。
私はそのCM自体はほんの数回しか見たことがなかったのですが、
「#水の山行ってきた」のタグをつけて
宇多田ヒカルごっこをする若者が続出したそうで('ω')ノ
あれから3年、ぼちぼちいい頃かな、と思って再び計画を練ることに。
とりあえず決定事項は仙水小屋テン泊で栗沢山~アサヨ峰を登ること。
あとは・・・あとは・・・??白紙。
そこでオットから「ちょうどいいから甲斐駒も行こうか」とのお言葉。
なぜそれを思いつかなかったんだろう。
というわけで山行計画も無事に決まり、そして一番重要な天気予報もまずまずだったので
行ってきたわけであります。
▲北沢峠にてバス下車後にカシャっとな。
9月2日(月)の朝、バス停のある仙流荘へ。夏の間のバスの始発は朝5時半、あるいは6時5分。混雑状況によっては5時台から臨時がバンバン出るのでハイシーズンは時刻表があってないようなもの、とはよく聞く話。(仙丈ヶ岳に登った時はどうだったっけ?8年ほど前なのでちょっと記憶が…)
でも今回我々が行くのは9月最初の平日。つまりちょうどこの日からバスの始発が8時5分になるのです…!山の2時間はかなり大きい(;´Д`)でも日帰りではなくてテン泊なので、まぁ大丈夫でしょう。※北沢峠からの最終バスは16時発なので日帰りの方は要注意です。
7時半ちょっと前くらいに仙流荘に着いたら、少し行列が出来ていた程度。それでもとてもバス1台には乗り切れず結局3台出たので9月の平日にしては結構混雑しているんだなぁ、と。
バスにゆらゆら揺られて北沢峠へ。下車したら仙水小屋に向かって歩きはじめます。10分ほどで長衛小屋に到着。こちらは人気のテン場なんですよね。写真右側、木々の向こうにたくさんのテントが見えます。このうちの何割かはこれから撤収なんだろうけど、8月中はもっと大変な混雑だったんだろうな~。ちなみに前を歩いている若い女性二人組も長衛小屋でテン泊のようでした。
ところで長衛小屋とこもれび山荘って、名前が入れ替わったというかちょっとややこしい変わり方をしましたね。我々が以前仙丈に登ったときは、今のこもれび山荘が確か長衛小屋…もとい、長衛荘?だったかな?
そんなことを考えながら仙水小屋への道を行きます。
↑看板の下、白いところに「仙水小屋は予約制です」と書かれています。
そう、今回の山行計画を練っている時にあちこちで見かけた仙水小屋の話。どうやら小屋の入口にロープが張ってあって「予約者以外立ち入り禁止!」としてあるようで。休憩所もトイレも開放していないそうなんです。いろんな方のブログやヤマレコなど拝見していると「なんて排他的な…」と思いながら通り過ぎる登山者が多いみたいですね。でも事前に予約をして実際に泊まった方のレポを見ると「感じのいい小屋番さんで快適に過ごせた」という声が多数。ほっと胸をなでおろし、やっぱりテン場は仙水小屋で決定だ、と思ったのです。
…でも、ちょっと待てよ。基本的にテン泊だと予約は必要ないと思うのだけどこうも「予約必須!」を強調されると、もしかしてテン泊でも予約しなきゃダメなのか?と不安になりまして。念のためオットが小屋に電話して確認してくれたのですが「テン泊なら予約必要ありませんよ、それにすごく空いてますから」とのお返事だったようです。よかった~。しかも空いてるとな!それは嬉しい。
そんなわけで安心して仙水小屋に向かいます。きれいな沢に沿って静かな登山道を行く我々。
あ、この丸太の橋って宇多田ヒカルさんも渡ってたっけ。(今更だけどCM見返してくればよかったな)
丸太の橋はもう一か所ありました。私こういうのものすんごい苦手です。超ガニ股の牛歩でなんとか通過します。こういうのって体幹のせいなのかね・・・鍛えねばならんとは思うのだけど。
南アルプスらしい静かな樹林帯歩き。・・・かと思えば
突然の岩場出現。そういえばどなたかのヤマレコにもあったっけ。背中のテン泊装備が重いけれどよいしょっと越えて。
更にもう少し進めば
仙水小屋に到着しました。おや?ネットのレポで見た文言とちょっと違う。以前は「予約者以外立ち入り禁止」を強調していたみたいだけど今回見たらもうちょっとやわらかい書き方になっていました。緊急時はトイレも借りられるみたいです(有料)。
さあ、さくっと受付を済ませてテント張って出かけるぞ!と張り切って小屋の戸を開けた我々ですが…
なんと小屋番さんご不在(;´Д`)
小屋の周りをウロウロして何度も「すみませーん!」と叫んでみたけど返事はなし。どこか出かけちゃってるのか~ どうしよう…いつ戻るかわからない小屋番さんを待つのもなぁ…なるべく早く出発しないと時間的な問題もあるし…
迷ったけど、勝手にテント張らせていただくことにしました。
テン場に着いてザックをぱかっと開けると一番上から諸星大二郎の暗黒神話がちらり。もし悪天候だったらテントで本でも読もうと、家を出る直前に愛読書を詰め込んだのでした。前週の木曽駒で馬頭観音をお見かけした影響もあります(;'∀')
左上の黄色いテントは先住さん。(お留守)今頃登っていて、戻ってきたら撤収って感じかな?
我が家のテントは右側のなんですが今回オットが「家にあったブルーシートでテントの前室を作りたいな~」と言っていて細引きを余分に持ってきていました。偶然にも先住さんも同じことをされていたのでどんなふうに設置してるのかな?と下からチラチラ眺めてしまいました。スミマセン。
前部分を固定するのに、左のテントの方はストックを使っていたのだけど
最近我々はストックを持ち歩いていない…!というわけで、ちょうど良さそうな枝を探してシートを固定していました。次回はストックを持って行かなければ。
テント設営後、出かける前にちょっとおトイレをお借りします。トイレの下で常に水が流れているタイプの水洗トイレ!きれいだしにおいもほとんどなくて快適。
おしゃれな洗面台も。鏡があるのって何気にありがたいですよね。出かける前にお水も頂戴しました。まだ幕営料払ってないのになんだか申し訳ない…
まだ小屋番さんが戻らなかったので、悪いなと思いつつ先に出発してしまいました。時刻は午前11時ちょっと前。アサヨ峰まではコースタイムで3時間20分。がんばろー。小屋を出てしばらくは苔むした雰囲気のいい森を進みます。
すると・・・おお、これか!!
何度となく見たこの風景の写真。見た感じとてもゴロゴロですが実際歩いてもゴロゴロでした。(語彙力…)
たまに浮石もありますが、思ったほど歩きにくくはないです。石から石へ、トントントンと。
仙水峠に到着!この辺りに来ると・・・
頭上に甲斐駒がドドンと・・・!あ、摩利支天しか見えてなかった。でもなかなかの迫力です。明日の朝、甲斐駒を目指すときはこの峠を左側に。今日は栗沢山へ行くので右側に
こっち・・・ですか?(ハイ、そうみたいですね)
登り始めこそゴロゴロの続きでしたが、少し登れば樹林帯に入りました。ここからしばし急登が続きます。
だんだん周りの木々が低くなってきました。森林限界が近いかな。途中、下山してきた方とすれ違ったのですがその方が「上はぜ~んぜんダメ!もう真っ白で!アサヨ峰まで行こうと思ってたんだけど下ってきちゃったよ」と言っていました。ええぇ、そんななの・・・
少々ガックリきつつも、森林限界を越え視界が開けるところまでやって来ました。右側に見えてるのが栗沢山の山頂かな?確かにガスってるけど・・・そこまではひどくないかも?
振り返れば甲斐駒ヶ岳。おお、更に大迫力!!
左下の稜線が黒戸尾根なのかな~。私は一生行くことがないでしょう。その向こうに山梨側が見えています。
ぴっかーん 頭上に青空!ウヒョヒョー
この辺りから岩場が増えてきますが難所はありません。
時折見つける真っ赤に染まった葉っぱ。秋ですのう。
ちらちらと甲斐駒を振り返りながら登る登る。
あともうちょっと。
着いたー\(^^)/栗沢山山頂です。
甲斐駒のお姿もだいぶ見えてはいます。が、晴れたときはとんでもない絶景なんでしょうね。でもこれはこれで大満足。
さて、改めて書きますが栗沢山は宇多田ヒカルさんのCM効果で登山者が増えたそうです。我々が登ったときにも山頂や山頂直下の岩場で若者たちの撮影会が行われていました。皆さんちゃんと南アルプスの天然水を持ってきていて「飲んでるところ写真に撮ってー」てな感じで。
私が山頂をウロウロしていた時もあとから来た若い男性二人組に「あの、写真撮ってもらえませんか?」と声をかけられたので応じていたらザックから色々小道具を取り出して・・・('ω')めちゃ楽しそう。
でも今回は9月の平日ということもあり、そこまでの混雑はありませんでした。山頂で居合わせたのも5~6人くらいかな?
一休みしたら先へ行かねばね。これから目指すアサヨ峰はこちらの道を行きます。カッコいい稜線!!ややガスってる感じもまた幻想的。
ここからアサヨ峰まではそこまで大きなアップダウンはないものの岩稜帯が続くとのこと。危険度は普通だとは思いますがこの日は風もものすごく強かったので一歩一歩を慎重に・・・。
目の前の岩に集中しつつも、安定した足場のところに来ると何度も甲斐駒を振り返ってしまう。本当に真っ白な山だなぁ・・・ビバ花崗岩。
そして出ました、一番の難所(とネットに書かれていた)の岩場。甲斐駒もそうだったけどこの辺りってロープや鎖が全然ないんですよね。でもここは手や足がかかるところがわりとあるのでそんなに苦戦せずにヨイショと登ることができます。
「あれが山頂かなぁ…」「いやどうせニセピークでしょ」そんな会話を何度か繰り返し、
あっ、7年前に登った鳳凰三山が見えてる!という頃に
アサヨ峰山頂に到着いたしました。
お疲れ様ーーー。
歩いてきた稜線。栗沢山から1時間弱くらい。大展望!!とまではいかない天気だったけどそれでも十分絶景です。
山梨側。
こちらが早川尾根。いつか歩きたい。欲をいえば夜叉神まで抜けてみたい…そんな日が来るんだろうか?そういえば栗沢山からここへ来る道中先行者がいたんだけどすれ違わなかったからまっすぐ行ったんだな。このあとおそらく早川小屋泊で、明日はどこまで行くんだろう…
そんなことをぼやぼや考えている間、オットはガスの晴れ間のシャッターチャンスを狙っていました。結局撮れたんだかどうなんだか…そもそもどこを狙っていたんだろうか?この方角で。
さて、風も強いしそろそろ下りますか。次来るのは早川尾根を歩く時だわ。
また岩々を越え、少々のアップダウンを繰り返し、
栗沢山を通過し、仙水峠へ下ります。こっちは更にガスガスだな…
樹林帯へ入る前、甲斐駒チラリ。摩利支天はずっと見えていたけど、山頂はずっとガスの中。
するとそこへ日の光。おお、摩利支天が輝いている!カッチョイイ。
そんな甲斐駒に別れを告げて樹林帯をどんどこ下り
仙水峠まで戻ってきましたーここまで来れば小屋まであと少し・・・おや??
トカゲ?カナヘビ?イモリかヤモリ?も、もしくはミニサンショウウオ…可愛いものが描かれていました。和みます。木の下部分にはちゃんとしっぽも。
そして仙水小屋に無事到着。さすがにもう小屋番さん戻ってるよね…?お留守だったとはいえ受付もせず黙ってテント設営してしまったので怒られたらどうしよう…と少々気弱になっていたのですがそんな心配をよそにとてつもなくあっさりとテン泊の受付が終了しました。
「テン泊したいんですが、お留守だったので勝手にテント張っちゃいました、スミマセン」「ああ、ハイハイ 1,000円ですねー」
あとは水場やトイレの説明を簡単に受けただけ。ほっとひと安心…穏やかそう、というか物静かで感じのいい小屋番さんでした。
ほっとしたところで、ひとまずおやつタイム。ご近所さんからいただいたキャトルフィーユの美味しいカステラと
愛知からの常連様にいただいた生せんべい。生せんべいって名前も不思議ですが食感も独特。ういろうのような、すあまのような…でもどれとも違って美味!
そして頭上には青空が広がってきました。美味しいおやつとこの風景。至福。ちなみに上の段に張ってあったテントはすでに撤収されていました。他に誰も来る気配がないので…今夜は貸し切りだ!!静かなテン場はこの世の天国ですよ…ほんとに。
おやつを食べて少しのんびりした後、早めに晩ごはんも済ませちゃおうということでごそごそと食材を出しました。下界で食べても美味しい麻婆春雨やらなんやら。
準備しながらオットがお酒を呑んでいたので私も甘酒で対抗です。
さっきの食材写真の右側にあった「山飯」なんですが確か3年ほど前に買ってそのまま使わずに放置してしまっていました。(賞味期限は2022年なのでまだ余裕)アルファ米とは違って揚げたお米なので、そのままでも食べられるしお湯を入れてリゾット風にもできるとのこと。どんな感じかな?と一口食べてみたらなんだかあられみたいで美味しい!↑ちなみにこの写真のは塩味。他にもカレー味と梅味があるけどそれらはまだ食べていません。お店にいけばもっといろんな味があるんだったかな?今度見にいこう。
すいません、見た目がちょっと良くないんですが…麻婆春雨を作ったところにざざーっと少し放り込んでみました。カリカリのところと少しふやけたところと相まってこれはなかなか美味!塩味のを投入したので味は若干しょっぱくなるのですがまぁ山を歩いた後だし塩分補給になっていいか。気になる場合は水でちょっとのばすのもありかも。
ふと思ったんだけど、カレー味のやつをカップラーメンのトッピングにするっていうのも美味しそうだな…今度山で試してみなければ。
晩ごはんのあと、オットは持参した日本酒を取り出し燗をつけていました。はーなるほど、こういうやり方もあるのか。
木々の向こうがなんとなく染まっています。仙水小屋は木々に囲まれているので展望はないのですがとても居心地のいい場所でした。
そして、思ったほど寒くない。前回木曽駒の頂上山荘でテン泊したときは場所のせいか吹きっさらしで寒かったので早い段階でダウンを着込んでいたのですが今回はまったく。樹林帯の中にあるからだいぶ違うのかな。そもそも標高もかなり違うしね。
しばし外でのんびりしたり、本を読んだり。私は持参した諸星大二郎の暗黒神話を読み始めたのですが最初の畜生の章を読み終えたところで寝落ちしました・・・オオナムチ・・・
夜中、暑くてシュラフのジッパーを開けたりゴロゴロ寝返りを打ちつつもぼちぼち眠れた…と思います多分。
翌日は午前3時頃に起きていよいよ甲斐駒へ。長くなりましたので続きは次回m(_ _)m
▼後編upしました▼
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