ひねもすのたり。

日々と山と猫と蕎麦屋のこと。

▲常念岳(2857m)・大天井岳(2922m) 2023年7月11~12日【前編】

沢を越え、安曇野のシンボル的なあの山へ。

 

今回のルート

【1日目】一の沢登山口P~常念小屋~常念岳~常念小屋(テント泊)

【2日目】常念小屋~大天井岳~常念小屋~一の沢登山口P

▲合計距離 24.9km

▲累積標高差 2378m

▲コースタイム 行動時間6:25(1日目)+8:46(2日目)

 

安曇野市松本市にまたがる常念岳日本百名山のひとつであり、地元の人々にとってシンボル的な存在なのだとよく耳にします。

有名な山だというのもあるけど名前の渋さがなんだか好きで「北アルプスデビューは常念だな!」と決めていた私。でも結局デビューは爺ヶ岳だったし(こっちはこっちで名前が渋い)、その後も常念には行きそびれていました。

そして昨年夏、いよいよ行くか…!ということに相成りまして\(^^)/蝶ヶ岳から縦走しようか、いっそのこと燕までつなげようか、などなど計画だけは立ててみましたが、ひとまずシンプルに一の沢からのルートを歩くことに。そして2日目はお隣の大天井岳まで足を延ばす計画にしました。

6:08 一の沢コースの第一駐車場から出発します。ここが登山口に一番近いのですが満車の場合は少し離れた第二駐車場に停めねばならんそうです。私たちは平日に動くからまだいいけど、土日は駐車場争奪戦が大変だろうな… あ、でもいつぞやの新穂高P5は平日でもギリギリだったっけ。

まずは登山口へ向かって舗装路を歩いていきます。ちょうどいいウォーミングアップになるけど背中のテン泊装備が既に重い…。

20分弱で登山口到着。ここには立派なトイレがあるのでいざという時に助かりますねm(__)m

苦手な舗装路歩きから解放され、ようやく登山道に入ります。頑張っていこー。

緑豊かなみずみずしい森。

登山口から10分ほどで山の神に到着。鳥居、小さな祠、そして…

おお…威厳のあるトチの木、こちらが御神木なのでしょうか。

お邪魔します_(._.)_二日間良い山行となりますように。

ウツボグサこんにちは。緑がみずみずしくていいね。

一の沢ルートはその名の通り沢沿いに登っていくので、何ヵ所か木の橋を渡ります。

歩いていくと右側に小さな池が。古池というのか。

斧を落としたら女神様じゃなくて芭蕉が出てきそうだな…とよくわからないことを考えながら通過。あと私の世代だとやはりあれですね、ファミコンドラクエ2の「ふるいけやかわずとびこむみずのおとばしや」。

苔の上にツツジの花がぽとぽと落ちてなんだかおもしろい光景…ちょっと待て、ツツジってまだ花が残ってたっけ。これもしやシャクナゲの花がバラバラになったやつか?

わ、この沢の右端を通るのか。こういう滑りそうな道苦手なんだよな…と恐る恐る一歩を踏み出しましたが、意外と滑らない石で助かりました。

空はどうにも曇りがち。梅雨明け前でやや不安定な天気なのが心配だな…午後の遅い時間帯は雨になるかも。ひとまずテント設営までもってくれれば御の字です。

雲が多くても時折陽が射すのが嬉しい。なんだろう、この木やけに神々しいな。

こんな山道を登ったかと思えば、

また沢沿いの道。

わぁクルマユリがひょっこり。可愛いな~。

トリカブトも。有毒な恐ろしい花ではあるけどこの青い色がとても好きです。

王滝ベンチに到着です。…あれっ、地図だと王滝だったけど現地の看板には大滝とありますね。由来をざっくり調べてみたけどよくわからずでした。

ルート上にはこんな看板がいくつかあるのでありがたいことです。

可憐なゴゼンタチバナたち。

みずみずしい緑だな。ひょろ~んと長く垂れ下がっているのはサルオガセか??

ギンリョウソウの幽玄な姿。

あちこちキョロキョロして楽しみつつも、足元には十分気を付けて。

何度目かの橋を渡ります。

ここが笠原沢か。ざっくり考えて小屋までの中間地点という認識。距離で見ると半分以上来たけど最初は林道だったからねぇ…。

沢の様子。結構勢いよく流れていますね。

登山道も水ビシャでございます。普段からこんな様子なのか、それとも梅雨時期ということもあり水量多めなのか…。時折「え、こっちで道あってる?」と思う箇所もあったけど、

〇だもんねぇ…。山登り初めて10年以上ずっと沢沿いの道が苦手だったけど、今回ので耐性が少し付きそうですわ。

おお、これは私が勝手に「クロクモソウ的な何か」と呼んでいる葉っぱだ。しっとりつやつやで可愛らしいなぁ。

エンレイソウの巨大な葉っぱ。これは黒いお花だったんだね。

時々下ってくる人とすれ違いながら、水の流れる登山道を黙々と登っていきます。

陽を浴びる葉っぱがきれいだな。

そしてまた開けました。〇印を辿っていきましょう。

当然のように橋を渡っていますが、これがなかったら難儀しますよね…(゜゜)ありがたや。

真夏のあつ~~~い時季なら浴びたくなるような水しぶきですが、この時はまだそこまでではなかったような。

お、ここからが胸突八丁ですか。一の沢ルートではここが難所と言われていて、毎年のように滑落事故が起こっているのだとか。

ただ、鎖場やガレ・ザレ場などではなく、しっかりとした階段が付けられているんですよね…急ではあるけれど。なぜここは事故が起こりやすいんだろう?

実際に歩いてみても、足元に気を付ければ大丈夫だなという印象でした。ただ「事故多発ポイント!」と事前に聞いているからか内心ドキドキ…(;'∀')

あと右側(下りでは左側)が微妙に高度感があるのと、周りにちらほらお花が咲いているのでよそ見してうっかり足を滑らせたら結構なケガをするかもなぁといった感じ。

グンナイフウロの後ろ姿。

斜面にたくさんのニッコウキスゲ。なんとかトラノオのような白いお花も。

奥にはひっそりシャクナゲも。そんなこんなで胸突八丁を無事通過であります。

さて…おおう、また沢沿いの道なのね。私にとってはこちらの方がよっぽどの難所だけど気を付けて行ってみます。

ん?道こっちで合ってる??マークのとおり沢の右端を通っているんだけどかなり歩きにくい(;´Д`)私の足では不安なのでここでオットと先頭を交代しました。なんとか登りきって振り返ると…

あれっ左奥にめちゃめちゃ歩きやすそうな道がある…!恥ずかしながらどこで分岐していたのかまったく気付きませんでした(;'∀')でも私たちの前に先行者もいたと思うんだけどなぁ…謎でござる。

そんなこともありつつ無事に沢沿いの道を抜けました… お、最終水場が見えてきましたよ。

一の沢ルートは水の豊富な道ではありますが、ここが最後の水場になるそうです。小屋含め稜線まで上がると水場はありません。ここでなるべく多く汲んでいくか、あるいは小屋で購入するかになります。

まずはボトルに汲んでひとくちゴクッと。キンキンでうまーーーー。

あとは2Lのプラティパス×2本分汲んで、オットと私のザックにひとつずつ。

最後の登りを前に2kg分追加というと少々不安にはなるけど、まぁこのくらい大丈夫でしょう。

さてもうひと頑張り!…おや…水が増えても意外と平気だわ。

小屋までにベンチが3つあったんだっけ。休憩することなく一気に登ります。わっせわっせ。

おーーー開けたーーー。あそこが山頂かなぁと思ったけど手前のニセピークでした。そりゃそうか、小屋から山頂のCTは1:00~1:30くらいですもんね。

常念乗越到着であります\(^^)/すぐ後ろには常念小屋の赤い屋根が見えてきました。

10:55 テン場へ行く前にまずは小屋で受付を。オットはビールやお酒なども買いたかったようだけど、それはまた後ほどということで。

さてさてテン場へ行きましょう~。

ちなみに使用料は1人2000円。ここ数年でびっくりするくらい値上がりしましたよね…でも小屋や登山道がなくなってしまうのは悲しいのでこのくらい払わせていただきます。って本当なら小屋泊でしっかりお金を落とすべきなのだけど(・・;)

テン場は小屋近くの小さめスペースと、小道を数メートル奥へ進んだところにある広いスペースの二か所。「奥の広い方は景色もいいから人気だけど今日みたいに風が強い日は大変かも」by小屋番さん

そうなのですよ…この日稜線上は強風が吹き荒れていまして。私たちも樹林帯から常念乗越に出た途端、風を受けてよろめいたほどでした。

どこにテントを張ろうかしばし悩んだ結果、風が心配だけどせっかくだから景色の良い場所にしました。

正面はこんな感じ。天気が良ければ槍ヶ岳が見えるはずですが、だいぶ雲がかかっていますねぇ。

山頂方面を見上げるとこんな感じ。すぐそこにトイレが見えているけどこの時は閉鎖中でした。小屋側スペースに同じような仮設トイレがあるのでそちらを使わせていただきます。

さて、いっぺんにテント設営後の写真であります(;'∀')

私の場合、テント内では荷物をざっくり2つに分けます。黒い袋(普段使いのエコバッグ)に食品やクッカー類、右の青い袋(防水パックライナー)にそれ以外の着替え類や洗面用具類などをごちゃっと入れてしまいます。その他こまごましたものは枕元に。ザックは足元。

ものすごくおおざっぱな人間なのでこのくらいの分け方で十分。これ以上細かく整理整頓しようとすると絶対「あれどこにいった!?」ってなるんですよねぇ…。

テント前でお昼ご飯を軽く食べたら常念岳山頂に行く予定。家で握ってきたおにぎりとトレイルミックスを適当につまみます。

おにぎりがほんのりピンク色なのは梅干しの汁(梅酢)を混ぜたから(;'∀')これまでも傷み防止にお酢を混ぜてはいたのですが、いつも余ってしまう梅酢がもったいなくて「これ入れたらいいわ」と活用しています。ちなみに梅干し本体も入っておりますよ。

あら、足元には可愛いウサギギク。いつ見ても園芸種のようなお花だなぁ。

12:24 さてさて、アタックザックに持ち替えて山頂を踏みにいきましょう!

小屋周辺でも既に風が強かったけど…少し登ると更に強くなり体が煽られる…!!

両足を踏ん張って登っていきます。

この辺りのガチャガチャした岩の感じ、なんだか好きだったなぁ。意外と崩れにくくて歩きやすかったし。「これは○○石だ」と分かればより楽しいんだろうな。フォッサマグナミュージアムであれだけ石の種類を見たのにひとつも覚えていないわ(;'∀')

登りながら西側をちらっと眺めると… あれ?槍がちょっとだけ見えてる?

ズーーーム… ほえー、ここから見るとこんなにおぼっちゃま君スタイルなんだな!

昨年は西鎌尾根からの槍に行ってみたいなぁとぼんやり考えていたけど結局行きそびれてしまいました。

振り返って小屋を見下ろすと…おおーいい眺め!後ろに見えているのは横通岳になるのかな。明朝は大天井岳を目指すのであちら方面へ登っていきます(横通岳は巻いていくけど)。

こんなふうに登りながら何度も小屋方面を見下ろしていた私。その理由は…

あまりに風が強すぎてテントが飛ばされていないか心配だったから(;'∀')

お、あるある。ガッチガチに固定してあるからよっぽど大丈夫だとは思うけど…(オットから何度も「大丈夫だって!」と言われました) 心配性っていやだわね~。

さて引き続き頑張って登っていきましょ~。

む…これは東側の景色だっけ?(もはや記憶が) 安曇野の町が見えているのかな。そうだとしたら正面には長峰山と光城山があるはず。あそこからの眺めも素晴らしかったなぁ。

そしてまた小屋方面を振り返っている…うーむ肉眼ではテントがよく見えないなぁ(心配性爆発)。それにしてもその背後の山々の美しさよ!

わしわしと登り、この辺りが小屋から見えるニセピークかな。

越えたら少しゆるやかな道になりました。先に見えているのがいよいよ山頂かしら。

途中で分岐が。おおーこれが三股への道なのね。

三股起点で蝶ヶ岳常念岳の縦走もしてみたいなと思いつつ。

分岐を過ぎたらあともうひと登り。

岩ゴロを乗り越えたら…

13:32 常念岳2857m、登頂であります\(^^)/

おお、先程休憩している人影が見えたけど確かにこの辺りは風が強くないな。ちょっと休ませていただこう。

山の神様、おかげさまで無事に登ってこられました。ありがとうございます。

…って、山頂に祠があるのは知っていたけどそもそもどんな神様が祀られているんだろうか。調べてみたらこちらの祠の御祭神は大山祇命建御名方命で、松本市にある岡宮神社が管理されているとのこと。諏訪信仰の流れを汲む歴史ある神社さんだそうで、江戸時代以前の薙鎌が見つかっているのだとか。

おお、薙鎌!諏訪信仰の本で読んだっけ…諏訪明神の神器として非常に重要だと言われているものですよね。あまり深い話は出せませんので気になる方は調べてみてくださいませm(__)m

山頂標識が倒れている… 山あるあるだけど皆さんこういうの手に持って記念撮影されてるよね~って私も持ってみようとしたら思いのほかずっしり重かったのでやめておきました。

明日向かう大天井方面。山肌の色合いが美しいな。やっぱり南とも中央とも雰囲気が違いますよね。

奥の方に見えているのが燕なのかな。

ズーーーム。一番奥にうっすら見えているピークがそうかも。

燕といえば一昨年7月にコマクサの大群生に感動して「これは毎年恒例にしたい!」と思ったのに昨年は結局行かずじまいでした(;'∀')

視線を少し東側に移すと、ぼんやり猫耳のようなピークが…あれ鹿島槍が見えてるのかな??方角的には合ってると思うけど山座同定が苦手なのでいまひとつ自信がありません。

西側の槍ヶ岳山頂は雲に覆われていたけど…やや北側にちらっと見えていたあのギザギザはどの辺りになるのかな。そういえば以前本で「鋸の歯を上に向けたような槍ヶ岳・北鎌尾根」という一文を読んだような記憶が。もしかしたらあれがそうなのかも。

反対の東側。あそこに見えているピークが前常念かな。

山頂からほんのちょっとだけ下ってみます。

蝶ヶ岳への縦走路を示す道標。

この向こうかぁ~蝶ヶ岳の山頂はどの辺りになるんだろう。それにしても…

足元に見えている龍の背のような稜線がカッコいいな…!

そんなこんなでしばし山頂でのんびりさせてもらいました。ぼちぼちテン場に戻りましょうか。

山頂は比較的風が穏やかだったけど下りはまた強風…!

風によろめきつつも、時々足を止めて周りの景色を見渡します。槍は相変わらず雲の中。

おお、小屋とテン場がしっかり見えるところまで戻ってきましたよ~。よし、我が家のテントはしっかりあるな(安堵)。

ふと西側を見ると… あっ、また槍が見えてる!

(主語が大きくなってしまうから異論は認めますが)人はなぜシンボル的なものに惹かれるのでしょうかね。富士山もそうだし、鳳凰三山オベリスクも見えると嬉しい。

さてさて無事に常念乗越まで戻ってまいりました。

14:36 本日の行動はこれにしておしまい!あとはのんびり過ごします。

テントへ戻る前に小屋へ立ち寄り。明日は曇り予報。風はどうかな~…今日のような強風だと稜線歩きが心配です。一応予定通り大天井を目指すつもりで、あとは様子を見ながらにしよう。

小屋では手ぬぐいなどお土産を購入し、オットは更にビールを入手。

テントに戻って着替えなどしていたら雨音が。まだ外を歩いている人たちには申し訳ないけどナイスタイミングでした…!上で降られなくてよかったな。

晩ごはんまで時間があるので読書や昼寝など。今回は常念岳という名前にひっかけて岳念という坊さんの怨霊が出てくる一冊を選んできました。

ところで常念岳という山名の由来については諸説あるそうですね。

高橋庄太郎さんの著書『北アルプス -テントを背中に山の旅へ-』には

通説となっているのは、春になると山肌に現れるトックリを持った法衣の僧、通称「常念坊」の雪形。坂上田村麻呂がこの付近に遠征してきたときに同行していた重臣という説もあれば、僧ではなく酒好きの山姥だったという説なども残っている。

とありました。いやはや…坂上田村麻呂重臣と酒好きの山姥ではえらい違いだな…!

高橋庄太郎さんは続けてこう書かれています。

面白いのはW・ウェストンの『日本アルプス』にも書かれている次の話だ。

あるとき、密猟者がこの山に入ると、山頂から勤行の声と鐘の音が聞こえ、夜通し絶えることがない。その気味が悪い声を聞いている内に密猟者は罪悪感を覚え、それ以来、山に入ることを止めたという。つまり「常」に「念」じている僧がいる山というわけだ。

確かにこれは面白いというか印象的な話ですね。

おお、気付かぬうちにオットがお酒に移行している。

外では雨が降り続いていますね… そして虫がすごいな!テントとフライシートの間に無数の黒い点々が。

気付けば時刻は17時過ぎ。そろそろ晩ごはんにします。簡単にラーメンと乾燥野菜と…

オットの実家でもらった角煮も!あと私が好きなコーン\(^^)/

雨が止まないので前室で調理をば。現在使っているテント(nemoのダガーオズモ2P)は前室も広々しているのでこういう時にとても便利。

映えない山飯作りに定評がある(?)ひねもすです。今回もあまりおいしそうな見た目ではないけど、とても美味でした(^^)

このあとは翌日の準備や寝る支度、そしてまたダラダラと過ごして一日目が終了。

というわけで前編はここまで。後編に続きます。

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