ひねもすのたり。

日々と山と猫と蕎麦屋のこと。

吉田山(1,450m)戒壇不動コース 2020年2月11日



信仰と展望と痩せ尾根の里山へ。


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先月のある日のこと。
山好きの常連さまグループが「吉田山に登るつもりだったんだけど、天気も悪いし雪も結構あるしでとっとと下ってお蕎麦食べいこうか~って話になって。」
と言いながら当店に寄ってくださいました。
ん?吉田山ってどこだったっけ?と思い訊いてみると、高森町にある里山とのこと。
そんなお山もあるんだなぁと思いつつ、そのあとは他の話に移り・・・
私の頭の中に、なんとなく「吉田山」という名前がぼんやりと残っていました。

そして今週の定休日。
天気も良さそうだしどこか登りに行こうか~という話に。
数年前からずっと気になっていた瑞牆山の「カンマンボロン」に行こうか?という話も出たんだけど、最近遠出してばかりだったからちょっと大変かな・・・。
じゃあ近場で、いつものカラカサは?烏帽子は?南沢山から横川山とかは?それとも高烏谷山?
もしくは女沢峠からの戸倉山でも目指してみる??
などなど・・・色んなことを考えましたが・・
最終的に「吉田山に行ってみる?」ということになったのでした。

そうと決まればどういうルートで歩くか。
メジャーなのは堂所森林公園の上から吉田山キャンプ場を経由して登頂するルートとのこと。
それともうひとつ隣政寺というお寺さん近くから戒壇不動や奥の院を経ていく直登ルート(山の寺コース)。
(ゴルフ場上から前高森山経由のルートもあるけど今回は選択肢になかった)
はじめて行く山だしとりあえずメジャーなルートで行こうか?とも思ったけど
山の寺コース上にある戒壇不動や奥の院になんとなく惹かれてしまい、今回はこちらから行くことにしました。
コースタイムはざっくり登り2時間、下り1時間強。
行程も短いし標高差もそんなにないのでのんびり気分で行けるかな~。
・・・なんて思っていたら、山地図の下に
「山の寺コース 玄人受けする。奥の院先からは難度高い。
というちょっと気になる注意書き・・・・・(゚Д゚;)
私、大丈夫かな??まあ、なんとかなるでしょう!



またしても前置きが長くなってしまいましたが、出発です\(^^)/



今回、月曜日ではなく火曜日の祝日だったので思い切ってお休みにしてしまった私たち。
祝日は基本的に仕事をしているので、山登りに行くことなんて滅多にありません。
天気予報もいいし、これは賑やかな山行になるかな~?と思いきや・・・
登山口に着くと車は一台もなし。おお、これはいつものパターン・・・?



でも天気は最高!とてもクリアな青空です。



身支度を整えて、早速歩きはじめます。
このとき午前10時半。登り2時間ほどなのでまあお昼頃に着ければ上出来かなぁ。



歩きはじめてすぐ、小さな橋を渡ります。
所々傷んでアヤシイところがあるので気を付けて。両側は鉄筋(多分)が入っているので頑丈そう。



5分ほどで、本に載っていた「隣政寺発祥の地」を通過。



ゆるやかなつづら折りの道をずんずんと登っていきます。
とても歩きやすい道。ハイキングにぴったりだな~。



更に8分ほどで見晴の松に到着。
ここは特に展望はないらしいと事前に読みましたが・・・



うん、確かに。木々の向こうにうっすら南アルプスの山々が見えるくらい。



でも近くにはベンチが置かれているので休憩するにはいいですね。
ところで見晴の松の看板をよく見ると「ここで半分 これより難所」の文字(・_・;)
半分というのはおそらく戒壇不動までの距離かな。そして難所とは・・・



ちょっと緊張しながら先へ。



おお、ちょこっと痩せ尾根。
確かにこれまでののんびりした道と比べると、少し急なところもあったかな?
でも特に注意する箇所はなく・・・強いて言えば 落ち葉がすごい
どなたかもヤマレコか何かで書いていたけど、もっふもふで足を取られます。
で、そのもっふもふの中に大きめの石や太い枝が隠れていることもあるのでちょっと気を付けて進みます。



第1展望台というところに到着。



ここにもベンチ。そして向こうが開けていて眺めがいい(*‘∀‘)



南アルプスずらり!ちょうど仙丈や白根三山のあたりがよく見えていました。
今日は視界もクリアだし嬉しいな~。



そこからひと登りでちょっと広いところに出ました。
ここまで登山口から20分ちょっと。
左下に伏せてある大きな看板がありますが、それを持ち上げてみると・・・



戒壇山の由来が書かれていました。おお、夢の中に観音様が・・・
この辺りは古くから信仰の山として地域の人々から慕われてきたのですね。



お初にお目にかかります。お邪魔します。



この広場からの眺めも素晴らしかったです。東側がどどんと開けて。



ふと上を見上げると赤い拝殿が。奥の院かな?と思ったけどそれはまだ先のはず。
あちらが戒壇不動かしら。



右へ巻いていくように登山道が続いています。
あの赤い拝殿にはどうやって立ち寄るんだろうか。



おっと、左側に「観音出現の岩穴」が。
さっき下の由来に書いてあった岩ですなー。光り輝く観音様はここから出現されたのか。



岩穴・・・あれのこと?違うかな?小さすぎ?



ここには二つの巨大な岩が並んでいて、ものすごい迫力でした。
ほえ~と間抜けな声を発しつつ、登山道を進んでいきます。
右へ巻いていた道はやがて左に折れ・・・



おや!さっき下から見上げた赤い拝殿へ行きあたりました。
なるほど、先ほどからあちこちに「参道」と書かれていたけどまさにですね。なんだかワクワク。

おじゃましまーすと言いながら中へ・・・
すると、



「おお!!」

オット「どうした・・・おお!!!」

戒壇不動とご対面の瞬間、恥ずかしながらちょっと大きめの声が出ました。
自然の岩を彫って作られた摩崖仏の不動明王様。なんという迫力だ・・・鳥肌ものです。
写真では伝えきれないこの素晴らしさ、ぜひ実際にご覧になっていただきたい。
個人的には摩崖仏と聞いただけでテンションが上がります。
(私の場合仏様に詳しいわけではなくてただの諸星大二郎好きなのですが)



ここで護摩を焚くのかな。
ところで先月の戸倉山でも不動明王様にお会いしたわけですが、そもそも不動明王というのは…

語源は「動かない守護者」を意味し、インド神話シヴァ神の別名です。

シヴァは暴風雨の威力を神格化したもので、破壊的な災害を起こす半面、雨によって植物を育てます。その破壊と恵みの相反する面は不動明王にも受け継がれているのです。不動明王は仏法の障害となるものに対しては怒りを持って屈服させますが、仏道に入った修行者には常に守護をして見守ります。

大日如来の化身として、どんな悪人でも仏道に導くという心の決意をあらわした姿だとされています。


とのこと。
シヴァ・・・おお、マハーカーラ!(孔子暗黒伝もまた再読せねばな)
ところで帰宅してからよくよく考えてみると、今回候補に挙がっていたカンマンボロンも大日如来不動明王の意であると言われているそうな。
うーむ、今年はお不動さまに呼ばれているのか・・・?



いやあ、なんだかすごい空間でした。
やや放心状態に陥りつつも拝殿を抜けると、奥の院への道標が。
ところでこの辺りから下を見下ろすと・・・



あらら、ちょっとわかりにくくて急だけど下の広場から直登するルートもあったみたいです。
通るかどうかはあなた次第。



さあ!再び山道へ。ぐんぐん登っていきますよー。



戒壇不動から15分弱で奥の院に到着。
こちらには三体の仏様が祀られています。お供えのワンカップなんかも。
そしてたくさんの落書き・・・のようにも見えますが、よく見ると日にち、名前、「家内安全」などのお願い事がずらり。
1957年という数十年前の文字もしっかりと残っていました。



道標に導かれるようにして山頂方面へ・・・
本によるとここから難易度の高い玄人向けの道だとか。



奥の院を過ぎたらしばし下って・・・



その後ゆるく登ったりまたちょっと下ったりとアップダウンを繰り返しているうちに



あわわ、なんだか結構な痩せ尾根になってきた・・・??





え、ここどうやって通ったらいい?あ、そっちか!?
と少々わかりにくいところもありつつ、木々や斜面に手をつきながら足場の悪い痩せ尾根をなんとか通り抜けていきます。
なんだこの天然のアスレチック感!!途中からすっかり二人とも無言に・・・(;´Д`)



ちょっと広いところに出たのでたまらず小休止。
いやはや、なかなかの道だね、でも山頂まではあともうちょっとかな、なんて会話を交わしつつ



取り出したるは白いブラックサンダー沖縄バージョン!
吉田山を教えてくださった常連さまグループの中のお一人がお土産にくれたものなのです。
パワーチャージ\(^^)/



よーしあともうちょっと頑張っていきましょう!
そうそう、いつもの山のお供の落語なのですが、この日もまた枝雀さんで途中から「三十石 夢の通い路」を聴いていました。
ちょうどこの辺りで終盤に差し掛かり、船頭さんたちの唄が流れていたっけかな・・・。
この唄からさげに向かっていくあのしっとりとした感じ、いいですよね。

そんなほのぼのとした気分の私を待ち受けていたのは、最後の急登。
なにこの急登!そして落ち葉!足をずるずる滑らせながらなんとか登る・・・
そして脳裏をよぎる・・・
下りめっちゃ怖そうだな・・・。



途中に分岐があり、前高森山へ行くこともできるようです。
が、私たちはもちろん吉田山の方へ。



あの上が山頂か!人がいるといけないのでスマホの音量を最小に。
(先日作ったスマホケースが活躍しています。 →過去記事「山用スマホケース」



そして無事山頂に到着いたしました~。と、ここでちょうどお昼のチャイムが。
登山口から1時間半なのでぼちぼち良いペース。思いのほかいい運動になったなぁ(*_*)
山頂にいらしたのは意外にもお一人だけ。
祝日だし天気もいいのでキャンプ場経由のルートからもっと大勢登ってくるのかと思ってたわ。



広々とした山頂。冬場は葉が落ちているから特別明るくて気持ちのいいところでした。



あの木々の向こうに見えるのは・・・
オットが「安平路とか摺古木とかかなぁ」と言っていたけど合ってるかな。



そして東側はこれまたどどんと開けて最高の眺めです。



塩見はやはりカッコイイなぁ。



蓼科山の姿も。あれから雪増えたかなぁ・・・増えてなさそうだなぁ。



さて!お腹も空いたのでお昼ごはんにします~。
今回は戸倉山に続きまたまたチョコタンさんのパン(*‘∀‘)
・・・といっても、前回のはご厚意でいただいたものでした。(ごちそうさまでした!)
今回はようやくちゃんとお店に伺うことができて、購入してきたパンなんです♪
オット、網でパンを焼いて食べるのがすっかり気に入ってしまった様子。



戸倉山ではパンとアヒージョでしたが、今回は簡単にレトルトのスープをば。
実はこれ、あさくまのコーンスープなのですが・・・
数か月前に初めて(しかもたまたま)ご来店いただいたお客様から「美味しいお蕎麦のお礼に!」といただいてしまったものなんです。
あさくまといえば浜松方面に帰省した際に親と一緒に行ったなぁ。
それ以来行けていないけど・・・まさかこんな形で頂戴してしまうとは嬉しい驚き(^^ゞ



湯せんで温めて、シェラカップに移していただきます。
とろとろ~濃厚~美味しい~。
やっぱりいつもの粉末のスープとは味わいが違いますねぇ(粉末のも好きだけど)。
おや、写真右側からオットの手が伸びている・・・



おお、焼いたパンを放り込んでいる!これがまたウマイんですなぁ。

さて美味しいパンとスープとでシンプルながらも贅沢なランチでしたが
今回は更に変なおやつを作ってきてしまいまして・・・


わけのわからん見た目のこちら、柿巻きのパウンドケーキ でございます。
柿巻きとは伊那谷のお母さんたちが作る昔ながらのおやつで
干し柿を開いて平にしたものに柚子の皮やくるみなどを入れ、太巻きのように巻いたものなのです。
それを冷凍しておくと長期保存できて便利だよーと教えてもらったので、我が家でもいつもそうしているのですが・・・
先日冷凍庫の奥から一昨年作ったものを発掘してしまいまして(゚Д゚;)
冷凍なので腐ったり傷んだりしているわけではないのですが、そのまま食べるのもなんだかなぁというわけで
適当に輪切りにしてパウンドケーキに放り込んでしまったのでした。



切り口も妙な感じだ・・・。
パウンドケーキを作る時、いつも砂糖とバターをやや控えめにするのですが
今回は山のおやつなのでしっかり分量通りに入れました。
ちなみに粉はそば粉と薄力粉が半々で入っています。
(お店でお出ししているケーキは薄力粉なし)



余談ですが・・・山で使うナイフのこと。
人気のオピネルに憧れてはいるのですが「そういえばコレがあるじゃん」ということで
いつどこで買ったかわからない自宅用の果物ナイフを使っています。
あ、そういえば今回まな板になるようなものを持ってこなかったので
手ぬぐいだけ敷いて膝の上で切りました。女子力(?)ってなんだっけ・・・



そうそう、山頂の片隅にはこんな道標が。
ここを真っ直ぐいけば前高森山かぁ。



ここからおよそ40分ほどとのこと。機会があればあちらにも・・・とは思うけど「展望なし」って本に書いてあるなぁ。



その後もしばらく山頂でのんびり。そうだ記念撮影もしておこう。カシャッとな。
さてそろそろ下りましょうかね~ おっとその前にリップを塗り直そう・・・なぬ?!


リップが・・・崩壊しているだと・・・・・!!??(真ん中でポッキリ)

なぜなのかしばし考えてみたところ、今回リップをズボンのポケットに入れて歩いていたのですが歩いているうちに勝手にリップが限界まで繰り出されて、その状態で私がフタをぱこっと開けたからそのまま二つに折れた・・・んだな、きっと・・・。



・・・なんて、どうでもいい話でしたね、スミマセン。
わりと最近買ったばかりのリップだったのでちとショックでした。とほほ。



さあさあ、気を取り直して下山です!
あの痩せ尾根の急坂を下るのは気が進まない・・・けど、仕方ない。慎重に行こう。



ひいぃ・・・



あわわ・・・・・(若干余裕のあるところでしか写真を撮っていません)
痩せ尾根+急坂+落ち葉の海・・・ずるずると滑るようになんとかかんとか下ったはいいけど
10分もすると膝というか腿が笑いはじめました\(^o^)/
下りは枝雀さんの「山のあなた」を流していまして、この噺は私の中では別格で本当に大好きなのですが
今はそれどころじゃないと思えるほど必死!



とまあ少々大げさに書いてしまいましたが、ちょっと怖い下りはほんの数分。
奥の院手前まで戻ってくればひと安心です。



もっふもっふ、落ち葉の海に溺れながらざくざく歩いていきます。



不動明王様のところでごあいさつ。お邪魔しました。ありがとうございました。



登りでは気付かなかったけど、観音出現の巨岩をよーく見ると何か彫られているようでした。
なんだろうな・・・



例の壊れかけた橋を渡って・・・あら、よく見ると水の流れもだいぶ凍っているのね。



そして無事登山口まで戻ってきました!お疲れ様でした~。

結局登り1時間半、下り1時間。休憩含めても3時間半ほどのミニミニ山行。
更に合計距離2.6km、累積標高差414m ・・・そんなもんだったのか(*_*)
短いながらもバラエティに富んだ登山道、絶景、そして信仰の心。
なんだか盛りだくさんで楽しい山行でした。
また不動明王様を拝みに行きたいな・・・あそこまでだったら特に難所もないから気楽に行けそう。
そうそう、機会を作ってカンマンボロンも行かねばな~。


.