ひねもすのたり。

日々と山と猫と蕎麦屋のこと。

▲朝日岳(2,418m)・雪倉岳(2,611m)・白馬岳(2,932m) 2023年8月1~3日【4】※完結

2023年夏のメイン山行、3日目の記録です。

 

▼これまでの話。

 

【3日目】8/3(木)

おはおは。あっという間に最終日の朝。

この日こそ3日間で一番楽な行程となります。ほぼ下りがメインなのと、白馬大池~白馬岳という初心者にも人気のルートを歩くのでこれまでと比べて歩きやすさが段違いのはず。

もちろん舐めてかかっているわけではありませんが、ちょっと、いやだいぶ気が楽。

それにしても今朝も良いお天気だな。ご来光を拝みに動く人も多かったようですが、私たちはテン場でついだらだらとしてしまいました。

5:13 さてここでも来た時より美しく!撤収完了したらいよいよ出発しましょう。

今更ですが帰りがけに水場をカシャッとな。こちらもテン場すぐ近くの水道からいつでも水が汲めて本当に便利でした。ありがたや~。

ちなみに後ろに写っているのはトイレです。

そうそう、こちらのトイレについてなのですが。山行前の下調べ中「トイレが残念」というあまり良くないレビューばかりを見かけたので、そんなに!?とやや不安に思っておりました。

でも実際に行ってみると…ちゃんと男女別になっていて、女子トイレは個室が複数あり(男子側もおそらくそうだけどさすがに入っていないからなんとも)、まぁにおいは山小屋の外トイレだからこんなもんじゃないか?というくらい。なんだ、いいトイレじゃん!とほっとしました。

施設によっては「これは本当に山の中のトイレですか」というくらい綺麗なところもあるから、そういうところに慣れている方にとっては色々気になるところがあったのかな。

テン場を出ると、眼下には雲海が。

山々の重なりが美しいですね。

おお、八ヶ岳、そして富士山が!今回の山行では初富士ですね。ここからでもこんなにしっかり見えるのか~なんだか感動です。

ちなみに私はまだ小屋前から上の稜線へ出る道をちまちま登っています(;'∀')朝一の登りはたったこれだけでもツライのよ…ゼェゼェ。

しかし!登山道脇のお花畑が素晴らしすぎる…!私の好きなハクサンイチゲがこんなにも。黄色いのはミヤマキンポウゲ(だったはず)。

さてようやく稜線に上がりました。グッモーニン剱岳\(^^)/

わ、あの左のトンガリは…

シャキッとした槍!前日まで旭岳をトンガリトンガリ呼んでいたけど槍ヶ岳の尖り具合は一味違いますね、刺さったら痛そう。

下には頂上宿舎の赤い屋根。背後の剱や立山も含めとても良い風景です。

朝も白馬山荘の周辺は賑わっていました。そして山頂へ向かう人たち、下りてくる人たちも。途中で団体さんともすれ違ったっけ。

ところで…稜線に上がってから白馬山頂までの登り、喘息がものすごいキツかった記憶しかありません…(;´Д`)発作というほどではないけど喉の奥がつまるというか肺の辺りに違和感があるというか。※完全に喘息のせいだと自分でわかったのでご心配なく

いつもの吸入薬はもちろん持参していて朝晩と白い粉を吸っていた(語弊があるな)んだけど、テン泊装備背負っての縦走三日目はさすがに体にきているわ…。

ただ少しゲホゲホとやったらだいぶ落ち着いて、それ以降は快調でした。もしや運動を始めて15~20分くらいの時に出るタイプのアレかな。

6:16 二度目の白馬岳山頂\(^^)/

前日はガスっちゃってたけど今日はすっきりした良い眺めだ。あちらは雪倉岳朝日岳方面だな。

おや、もしやあれは…

朝日小屋だ!!なんだかもう既に懐かしい気分です。

こちらは山頂から南側の眺め。杓子岳や白馬鑓ヶ岳なんかが見えていると思うんだけど…

おや、あの既視感ある猫耳は…鹿島槍で合ってますか?どう見ても形がそれっぽいとは思いつつ山座同定力がポンコツすぎるので違っていたらすみません。というかやけに近く感じるんだけど気のせいかな。ズームしてるから…?まぁいっか…。

壁のような山の稜線のシルエット。

そして北には日本海。奥には能登半島も見えているんだよね…重蔵神社さんに行ってみたいなとずっと思いながらすっかり行きそびれてしまっています。ウガヤフキアエズの産屋の伝承があるそうなのですよ。いつになるかわからないけど、いつか必ず能登に行こう。

さて、周りの景色を眺めつつも先を目指しましょう。

…と言いつつまた振り返ってしまう。あの左上が先程までいた白馬岳山頂なんだけど、こうして見るとすごい形をしていますね!龍の背のようだな。

まぁいっか、時間もあることだしあちこち眺めながら行こう。

山の上から日本海を眺める機会もそうそうないしね。

三国境までやってきました。休憩にぴったりのスペースがあったので小休止していきます。朝ごはんはまた尾西アルファ米をテント内で食べたのですが、あまり食が進まず半分くらいしか食べられなかったのですよ…だからここでその残りをもさもさと食べていきました。やはり歩くためには食べなければだめね。

雪倉岳、そして奥の朝日岳。これまで憧れでしかなかった山々が、すっかり愛着のある場所へと変わりました。

さて、ぼちぼち動きましょう。この日は下りメインではありますが、これから小蓮華山というピークを越えていきます。だらだら登りキツそうだな…と思いきや、道が歩きやすいので意外とすんなり。

小ピークを過ぎたらちょっとトラバース。この辺りも緑のないさみしい眺めですね。いろんな表情のある山域だ。

山々の重なりと、千切れて浮かぶ雲海。おや、あそこの稜線に…

なにやら建物が。あ、あれって八方池山荘かな。リフトの支柱のようなものが見えています。八方池も機会があれば行ってみたいけど混んでいそうだなぁ。

そして唐突な槍穂。ごきげんうるわしゅう。

7:47 そうこうしているうちに小蓮華山到着です\(^^)/標高は2,766mで、なんと新潟県の最高峰なんですって。

山頂には鉄剣が立てられています。大日如来様も祀られており古くから信仰の対象となっていたそう。また、地震や風雪による崩落があり2008年の調査では以前より標高が3m低くなったのだとか。

そういうこともあるんだなぁ…そういえば南アルプスなんか一年に4mmも隆起しているといいますし。大きくどっしりとしている山でも、いつまでも同じ姿でいてくれるわけではないのですよね。

ふと見下ろすと… おお、空を映すような青い池が!あれはもしや白馬大池では…!!

うわーきれいだなぁ~~。感激して更に写真を撮ろうとするも、なぜかシャッターが切れない。あれ?おかしいなと思い確認すると「メモリカードがいっぱいです」という表示が…

ガッデム!!!

まぁ旅も終盤ではあるんだけど、まだまだ撮りたい風景がたくさんあるはずなんだよ~涙。

取り急ぎ「どう見てもこれダメだろ」というブレブレボケボケの写真を数枚消して、あとはスマホで撮るしかないか…と再び下山を開始しました。

ここから後日談なのですが、ネットでちょっとした電化製品を買うついでに「そうだ予備のSDカードも買っておこう」と物色してみると…そのお店の売れ筋ランキング1位が256GB、2位が512GB、3位が128GB…

は?え?

私がずっと使ってるの2GBですけど。

浦島状態爆誕というか私が疎いだけというかなんというか。とはいえ数字が大きいのはそれなりにお値段も良いので、ひとまず32GBで手を打たせていただきました。

注文したあとオットに「今ってSDカードもすごいんだねぇ、512GBだってよ」と言うと、オットいわく「だって今テラとかもあるじゃん」。

テ…ラ… 寺。

これ以上文明が進んだら本当についていけないのでどうか程々にお願いいたします。

機械に強い人たちとは基本的に頭の構造が違うんだよなぁ…なんて美しい花々を見ながら考えることではないか。これからだんだんと標高を下げていくから、三日間楽しませてくれた高山植物たちともお別れか。さみしいな。

ここいらでもう一度振り返っておきます。おお、あれは白馬岳ではないか。ここから見るとまた印象が違いますね。

その隣は杓子岳かな。こんなに美しい山なんだ…。

と、ここで遠い記憶がふわっと。10数年前、当時入っていた山岳保険のカードにプリントされていた山がとてもきれいだったので山名を確認すると、杓子岳と書かれていたような。

記憶違いかもしれないけど、本当だったかもしれない。この絶景はカードにしたくなりますよ。

小蓮華山を過ぎたら、わずかな登りがあって船越ノ頭というところを越えます。そうしたらあとはひたすら下るだけ。

いやぁ、出発前にも「この日のコースは歩きやすいはず」と書きましたが、実際歩いてみたらまさに天国でした…!!下り基調だからというのもあるかもしれないけど、急なところもあまりなく、基本的に人が多いから道がしっかりしているんですよね。

そう、1~2日目と比べたら人とのすれ違いがとても多く本当に賑やかな道でしたよ。そして白馬大池方面から登ってくる方々はやはり初心者風の方が多かった印象。皆さん蓮華温泉からじゃなくて栂池のロープウェイから来るんだろうな。確かにこれは猛烈におすすめしたい場所だな~。お手軽に登れる山にしては絶景すぎるもの。

ところで小蓮華山~船越ノ頭の間あたりだったかな、高校の山岳部らしき団体さんとのすれ違いがありました。まだ初々しい一年生らしき子たちも「何泊するの!?」というくらい大きなザックを背負って。中には半泣きの子もチラホラ…。

周りにいた人たちみんな、私たちも含めて「が、頑張れー!」と声をかけながらのすれ違いでした。

後日談ですが、このあと無事下山し自宅へ戻ったあと、ご近所さんが貸してくれた本に「高校山岳部の恒例行事で白馬岳へ登る」という、今回出会ったのとまったく同じシチュエーションが出てきまして。

それがこちら↓

蒼き山嶺 (光文社文庫) [ 馳星周 ]

価格:858円
(2024/2/21 12:39時点)
感想(1件)

馳星周さんの『蒼き山嶺』。馳星周作品もサスペンスものもほぼ縁がなかった私ですが、この作品はあまりの面白さに一気に読んでしまいました。

そもそもご近所さんがこの本を貸してくれた経緯というのが、私が「実は今回栂海新道と迷ったんだけど結局止めたんです」と言ったら、「確かうちに栂海新道が出てくる小説があったと思うんだけど…どれだったかな…そうそう、これ!よかったら読んでみて」と持ってきてくださったのです。

でも実際読んでみたところ…あ!ここから若干のネタバレ含みます。これから読む予定の方は飛ばしてくださいm(__)m

作中には栂海新道の描写はごくわずかで、大部分は私たちが今回歩いた白馬岳~白馬大池、そして三国境~朝日岳のことでした。人間模様や敵に追われる恐怖が軸になっているのとそもそも冬山が舞台なのですべてが理解できるわけではないのですが、「あーここ歩いたところだ!」「そうそう、こうなってた!」など直近の山の記憶と照らし合わせて想像しながら読み進めていくのが本当に楽しかったです。

そして山岳救助に携わる人の熱意や本能には感嘆するどころか「もういいから!そんなやつはもううっちゃっておけ!ああ、もう!言わんこっちゃない!」ともだもだし、終盤はもう得丸と池谷への感情移入が止まらず涙、涙。

無雪期の登山や、例え軽めのハイキングであっても一緒に山へ行く相手は慎重に選ぶべきとはよく言われます。それが冬山でお互いの体をザイルでつなぐパートナーとなると…その信頼関係は私のようなのんきな登山者には想像もつかないほど強いものなのでしょう。

その中で、これまでの関係がすべて打ち消され、お前は一体誰なんだと疑心暗鬼になりながらも信頼だけが途絶えないという絆の強さ。こればかりは冬山経験者にしか理解できないことなのかもしれないな…。

私が読み終えたあとはオットにも渡したのですが、「最後ってさぁ…○○なんだよね?」「え、私は■■なんだと思ったんだけど」と、結末について意見が分かれたのもまた面白いポイントなんだろうな。

いやぁご近所さん本当に良いタイミングで良い作品を教えてくださった。山の予習で読むよりも登ったあとに読んだというのが最高によかった。ありがとうございました。

ややネタバレ含めた感想ここまで。

あ、白馬大池が見えてきた!やっぱり空が映っていますねぇワクワク。

鏡のような美しさ。たくさん写真を撮りたかったのだけど例によってメモリ節約中。

そのため一気に場面が飛びます(;'∀')白馬大池山荘前での小休止を終えて、分岐から蓮華温泉方面へ下っていくところ。

そういえばの話。私たちが頂上宿舎でテントを張った時、近くにソロの女性がいたので挨拶だけ交わしました。荷物がだいぶ多そうだったし朝も私たちより早く撤収していたので「長期縦走なのかな」と勝手に思い込んでいた私。

でもこの分岐の先でその女性らしき方に追いついたので「あ、もしかして昨日テン場で…」と話しかけたら「あ、テントに猫の絵が描いてあった…」と言われなんだかものすごく恥ずかしくなってしまいました(;'∀')

※nemoのテントは盗難に遭いやすいと聞くので落書き(?)を施しております

改めて見るとソロのお姉さんのザックは超ビッグ。縦走ですか?何泊したんですか?と尋ねたらなんと「実はこれで一泊なんですよ、私パッキングが苦手で…」とのこと。

えっそうだったんだ!いやパッキング苦手はきっと謙遜されたんだと思うけど。テントもソロにしては大きかったし、山だからといって我慢せず自分の好きなものなど色々持ち込むスタイルのテン泊をされているのかな。荷物を背負うのが苦でなければそういう山旅も贅沢ですよね。

「それじゃあお気を付けて!」と私たちが先行する形で別れたのですが、そのあとすれ違ったおばさま方にも「すごい荷物ねぇ!どこまで行ってたの?」と話しかけられていたお姉さんでした(;'∀')

さてこのあとはひたすら樹林帯を下っていくだけ。白馬大池まではだいぶ賑わっていたけどこの道に入ったら急にまた静かになったな。でも途中で何組か追い抜いたのでそれなりに登山者はいてひと安心。

…そう、3日目の私は「歩きやすい!ヒャッホー!」と急に元気になり、この下りも結構ガンガン行っていたようです(;'∀')普段も特別下りが遅いというわけではないのですが、何組も追い抜くほど調子が良かったみたい。※とはいえそもそものレベルがポンコツなのでそこまでハイスピードではありません

ただ下りで頑張ると後々ヒザにくるので気を付けねばならないところでありますね…反省。

道中、眺望が開けるところがありました\(^^)/ワー最高の眺めだ!方角的に雪倉、赤男山、朝日岳が見えているのかな?

この開けた辺りが天狗ノ庭というんですね。休憩に良さそうな少し広々としたスペースもあったような記憶。

充実の3日間をありがとうございました。最後までこんな美しい姿を見せてくれて感謝感激です。

さて、最後の最後に転んでケガをしないよう気を付けながら下ります。途中にいくつかこんな看板もありました。少しのことだけど励まされます。

そして蓮華温泉の辺りまで下りてきました…!

一昨日の朝に通った蓮華温泉ロッジ再び。

11:31 無事!駐車場まで!下山であります!!!

うわぁーーー超お疲れ様でしたアァァー!!!

いやはや3日間お天気に恵まれ、テン場では雨に降られたけど、風もほどほどに、とても良い条件での山旅でした。事故もケガもなく元気に下りてこられて良かったー。

しんどいのはしんどかったけど本当に行ってよかった。お花にも雷鳥にもたくさん出会えて最高の3日間でした。ありがとうございましたm(__)mm(__)m

 

▼おまけ

山を下りたら小谷村の道の駅へ。ここは温泉も併設されているのでとても便利です。汗を流してさっぱりしたら食堂でお昼ごはん~。ご飯おかわりして幸せ~。

自宅への帰り道、雲から光が射しこんでとてもきれいな眺めでした。

無事に帰宅したあとは猫たちのご機嫌とり、そして留守中に猫たちの面倒を見てくれたご近所さんにご報告&お礼。

それらが済んだら諸々の片付けや手ぬぐい開封の儀を行いました。

毎回山小屋ごとについつい手ぬぐいを買ってしまうけど、今回は朝日小屋で買った1枚だけだったなぁ…。お花畑とちょこんとした小屋が可愛い。大事に使おう。

 

長い山行記録になってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!引き続き、昨年秋以降の山行記録も書いていきますので今後ともどうぞよろしくお願いします。